鳥瞰図の発想
視点を意識させる地図
鳥瞰図を描くには、まず視点の平面上の位置と高度、及び俯瞰する方向を設定します。
視点がある,,, それが鳥瞰図の特徴で それで起伏と陰影のある実際の地形 が描かれ、
分かりやすい地図になります。
しかし、地形を抽象的な
記号で表現する等高線図と比較してみると、色々不便な所があります。
見る方向は一つしかありません。
近景と遠景では情報量がちがいます。
見えない部分があります。
これらは鳥瞰図を作りながら、いつも もどかしく思っている事ですが 考えて見ると
この欠点は、ちょうど私達の物の見方にひそむ欠点とよく似ています。
私達が物事を判断する際には、出来るだけ 間違えないようにと願い、また、一応自分の考えは
正しいと思っていて、ついつい <神ならぬ身の知るよしもがな> と言う事を忘れがちです。
鳥瞰図は、視点があるがゆえの立体感とともに 視点があることの不便さも気づかせてくれます。
そして そのことが無意識のうちに絶対化していた視点を移したり 異化してみる新鮮な体験の
きっかけになるものです。
パノラマ地図「西中国山地」は県北の中国山地を近景にして都市と田舎の関係を逆転させ山間部に
暮らす人々の視点で描かれています。字名にいいたる地名、大きな道や細い道、さらに往時の人々の
生活ぶりを峠名まで詳しく書き込んだのも、この地図の目的にそってのことでした。
(作成にあったって、故桑原良敏氏の「西中国山地」-渓水社刊- を参考にしました。)
[可部線探訪」は廃線が決まったJRの小さなローカル線の沿線の魅力を描きたいと思って作りました。
視線は太田川に沿って走る鉄道と一緒に移動しています。現在の景観のうえに、かっての歴史的景観も
重ねました。今の景観の中に露頭のように昔が顔をのぞかせていることがわかります。
マイカーではただ通過するだけの道ですが、太田川を右に左に眺めながら、ゆっくり走る鉄道からは
その魅力をしっかりと目にすることが出来るのに,,,,, 残念です。
廃線によって失われる魅力を、せめて地図上でも味わえればと願っています。
パノラマ地図「広島近郊の山々」は「西中国山地」と同じ範囲を逆の視点から見た地図です。
広島市が近景にあり、都市の地名や交通路線図などを詳しく記入しています。
こちらはいわば都会人の視点で眺めた地図といえるでしょう。
パノラマ地図「中国山地中央部」は比婆山、吾妻山といった古事記の舞台になった山々を近景に
島根半島(出雲;伯耆)から日本海を遠望しています。古代、あるいはそれ以前のたたら製鉄関連の
遺跡、施設を出来るだけ詳しく書き込みました。
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